conclave GARDEN WORKS › 日々つれづれ › 「記憶のアップデート」

2011年07月24日

「記憶のアップデート」

こんんばんは。
conclave(コンクラーヴェ)です。


すこし前のwiredに掲載されていた記事ですが、
面白かったんでご紹介します。

広告で生まれる「ニセの記憶」:研究結果
http://wired.jp/wv/2011/05/27/%E5%BA%83%E5%91%8A%E3%81%A7%E7%94%9F%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%8C%E3%83%8B%E3%82%BB%E3%81%AE%E8%A8%98%E6%86%B6%E3%80%8D%EF%BC%9A%E7%A0%94%E7%A9%B6%E7%B5%90%E6%9E%9C/

内容について要約しますと、

この記事の筆者の、
高校時代の少ない記憶のうちのひとつに
友人と瓶のコーラを飲んでいる場面があるそうなんですが、

現実には、当時筆者の母校の規則で、
瓶のコーラを飲むことはほぼ不可能だったそうです。

では、なぜそのような記憶が鮮明に残っているのか?

筆者はそれを、コーラの広告により植えつけられたと、結論付けています。

「記憶のアップデート」


もちろんその根拠を、ある実験の結果をひいて説明もしています。

この結論に納得するかしないかはそれぞれですが、

わたしが面白いと感じたのは、そのあとに述べている
記憶の再固定化(memory reconsolidation)という理論です。
下に引用します。

 すなわち、記憶とは、常に変わらない情報が蓄積されているわけではなく、
 常に変化する「プロセス」であることが明らかになってきているのだ。
 いわば、思い出すたびに書き換えられるファイルのようなものだ。
 何かを思いだせば思い出すほど、記憶の正確さは失われて行く。
 記憶の確かさと感じられるものは、
 あくまで、それを最後に思い出した時点での確かさでしかない。
 記憶の元になった刺激が存在しないため、想起される記憶は変化している。
 そして、
 「実際に記憶している内容」から、
 「記憶したいと思っている内容」に近くなっていく。


これって、結構思い当たることないですか?


以前読んだ本でも、
①ウォーターゲート事件の証人の得意げな証言が、
のこっていたテープと全然かけ離れていた
(中公新書『問題解決の心理学』より)とか、

②被験者に図形を記憶してもらう実験で、
丸と丸を直線でつないだ図形(○-○)の下に「めがね」と書くだけで、
再び図形を思い出してもらったとき、(-○-○-)というふうに、
めがねに似せて書いてしまう例(岩波新書『ことばと思考』より)など、

①では証人の大統領法律顧問という地位が、
②では「めがね」という言葉が、
記憶を想起する際のフィルターのようなものになって、
記憶を変形させることは少しは知ってたんですが、
あらためて専門的見地からいわれると、なるほどと思いました。


つまり、私たちの記憶は、コンピュータのハードディスクのように、
常に以前記録したデータを再生できるわけでなく、
想起する際のきっかけ(動機)いかんで、ゆがめられて再生されうるとういことですね。


記事に貼られているリンクによると、このしくみを応用することで、
PTSDの根本治療に活用しうるということは朗報ですが、

はじめに書いたように、このしくみをまっさきに利用し、
洗練させていくのは広告業界だろうなあと思いました。


自分の主観とか思想とかを枠とすれば、

記憶は自分の枠や外部からの刺激によって、その時々で曲げられて想起され、
またその曲げられた記憶をもとに枠が形作られて、補強されるサイクルをたどっている。
しかも、無意識に。

逆説的ですが、自分の枠が固定されることに無意識であればあるほど、
枠は強固になってしまう。
これがよくいう「頭が固く」なることなのかも。

でも、自分に都合の良いように記憶を改変できるからこそ、
ラクに生きれるようにもできてるのかもとか考えたり。

ま、たまには自分の枠から外れた(まずこの認識自体難解ですが)、
いろんな情報、意見に意識的に触れる機会は作るべきでしょうねえ。


と、そんな妄想をしていたところ、


こんな本の書評が
『子どもの頃の思い出は本物か』
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20110719-OYT8T00357.htm

内容そのものが、「記憶の真偽を疑う」。
ドンピシャです。
書評もすばらしいです。

って、まだ本自体は未読ですが


書評をされた池谷さんの最後のことばに
“自分の何を信じたらよいかと、心地よい浮遊感を覚えるのだった”
とあります。

まさしくそうですよねえ。
自分という存在の拠り所である記憶が一定ではなく
どんどんアップデートされていく。

面白いなあ。


コウモリに飽き足らず
この本、買っちゃうんでしょうな―。

あぶないあぶない。



「記憶のアップデート」ではでは。
今日はこの辺で。
最後まで読んでいただき
ありがとうございました。







同じカテゴリー(日々つれづれ)の記事画像
39s iPad専用 bluetooth キーボード
御堂筋の自動車交通量。
自転車と、「石と薔薇」
最近の検索キーワード
ios5でiPadが少し成長。
続・古本祭@四天王寺
同じカテゴリー(日々つれづれ)の記事
 39s iPad専用 bluetooth キーボード (2011-12-30 19:07)
 御堂筋の自動車交通量。 (2011-10-20 22:59)
 自転車と、「石と薔薇」 (2011-10-19 23:11)
 最近の検索キーワード (2011-10-18 22:04)
 ios5でiPadが少し成長。 (2011-10-15 22:01)
 続・古本祭@四天王寺 (2011-10-12 22:27)

Posted by conclave at 21:24│Comments(0)日々つれづれ
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。