conclave GARDEN WORKS

ソフトバンクモバイルさんのサイトから転載。


こんばんは。conclave(コンクラーヴェ)です。


最近、向田邦子さんがマイブームで、
時間があれば読んでいます。


そんななか、
向田さんの講演会の模様を収録したCD『言葉が怖い』のなかで、
面白い話がありました。


向田さんの近所にとびの親方が住んでおりまして、

その親方さんのところで、
外国の方（英語圏）の飼っていた犬を譲り受けることに。


さてさてその犬、全然日本語が通じない（笑）。


つまり、日本語で「おすわり」「お手」などを言っても
一向に言うことをきかないそうなんです。


犬はエサもろくに食べず、どんどん弱ってくる。


こまった親方さん、

今までさんざん、何の仕事をしているのかわからない
近所の独身女と小馬鹿にしていた
（これは向田さんの被害妄想なのかもしれません）、
向田さんにしぶしぶ、

「あんた、英語はわかるかね」と頭をさげてきた。


それを受けて、向田さんが犬に「sit down」など
声をかけると、犬はとたんに言うことをきく。


親方さんは向田さんを見直します。


さらに、向田さんにそれらの英語を忘れまいと、
板っきれに（？）書いてくれと頼みます。


向田さんもそれを引き受けて、
板にいくつかの英語を書いてあげました。
カタカナに意味を添えて。


親方さん、律義です。
ヨシッとその板を犬小屋にくぎ（！）で打ち込んだそうです。



と、これで一件落着かと思いきや・・・


一年ほど経って、向田さんが犬小屋の前を通りかかると、
例の板の文字がもうほとんど消えている。

どうしたことか、と向田さんが見ていますと、

親方さん、
フツ―に日本語で犬に話しかけ、犬もそれに応じている。



親方さんが英語を覚えるよりさきに
犬が日本語を覚えちゃったという話です。



向田さんいわく、

犬は犬で、親方さんの表情や雰囲気や声を総合して、
「おい座れ」が「sit　down」を意味するんだと理解し、

親方さんは親方さんで、日本の犬に接するより少し思いやりをこめて
「おう、すわんな」とか言ったんじゃないかと。

だから通じたんだと。


そして、向田さん自身が海外に行った際

なんとか食べたいものが食べれたり、
観たいものが観れるのは、

相手が親方さんのように接してくれるおかげで
英語を理解できたり、
理解してもらってるんだろうなとおっしゃっています。


そして話の最後に、
こういったことが

ことばというものを理解するてがかりになるんではないか、

とも言われています。


私が向田さんの本を読んでいてすごく感じるのは、
登場人物が「自分のことば」を話している点ですが、


言語以外の部分の重要さを説いているこういった話をきくと、
そういったところに注意を払った上で、人物を描いているからこそ、
人物のそれまでのふるまいなんかと一体になって、

「ことば」が生きてくるんだろうなあ、

とか思ったりしたわけです。


それはさておき、
講演会嫌いだった向田さんだったそうですが、

いえいえどうして、
間の取り方、話の展開の仕方（当たり前か）
などすばらしく、

なんといっても話し方に品があって、
聞いていて心地よかったです。

きっと素敵な人だったんでしょうねえ。


と、この記事を書く際に少し調べたところ、
つい最近、NHKで『向田邦子　ボクだけが見た彼女の涙』
というドラマが放送されたそうです。

全然きづきませんでした（涙）。

向田さんをミムラさんが演じて結構評判だったそうです。

NHKBSさーん、朝にメジャーリーグを律義に中継してくれるのも良いですが、

あと1度だけ、再放送お願いしまーす。

土岐麻子/Gift〜あなたはマドンナ〜



ではでは。
今日もこのへんで。
最後まで読んでいただき
ありがとうございました。